【タイ生活と法律】シリーズ第9回です。前回は銀行口座・送金・外為規制をお届けしました。今回のテーマは「食品安全と消費者保護」です。タイのスーパーや市場で毎日買い物をしていると、「この食品は安全?」「賞味期限の数字が読めない」「変なものを買ってしまったら?」という疑問が出てきます。日常の買い物に関わる法律の仕組みを整理しておきましょう。
1. タイの食品安全 — FDAマークを確認しよう
食品安全の法的基盤
タイの食品安全の法的基盤は、**Food Act B.E. 2522(1979年)**です。FDA(食品医薬品局)とMOPH(保健省)が主管しています。
タイの食品は規制の厳しさに応じて4つのカテゴリに分類されます。
| カテゴリ | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| 特別管理食品 | 最も厳しい規制。FDA登録が必須 | 乳児用食品、サプリメント |
| 管理食品 | FDA登録が必要 | 食用油、調味料の一部 |
| 規格食品 | 品質基準が定められた食品 | 特定の加工食品 |
| 一般食品 | 表示義務がある | 上記以外の加工食品 |
「อย.」マーク — これが安全の目印
スーパーやコンビニで加工食品を手に取ったら、パッケージに「อย.」(アーヨー)というマークがあるか確認してください。これはFDAに登録されている食品の証です。このマークがあれば、一定の安全基準を満たしていることになります。
全ての加工食品にはFDA番号(食品シリアル番号)の表示が義務付けられています。輸入品も同様です。FDAマークのない加工食品は、法的に流通が認められていない可能性があるため、避けた方がよいでしょう。
FDA番号の読み方
FDA番号は13桁の数字で構成されています。
| 桁の位置 | 内容 |
|---|---|
| 1-2桁 | 県コード(製造・輸入施設の所在地) |
| 3桁目 | 施設種別(1=FDA認可製造、2=県認可製造、3=FDA認可輸入、4=県認可輸入) |
| 4-8桁 | 施設許可番号+認可年 |
| 9桁目 | 発行機関コード |
| 10-13桁 | 製品の通し番号 |
日常の買い物でここまで確認する必要はありませんが、「อย. マークと13桁の番号がある」ことを確認するだけで安心材料になります。
Healthier Choiceロゴ
FDAが認証した「Healthier Choice」ロゴもあります。砂糖・塩分・脂肪が基準値以下の食品に表示される自主的なプログラムです。健康を気にする方は、このロゴも参考にできます。
2. 賞味期限の読み方 — タイ仏暦に注意
タイ仏暦とは
タイの食品ラベルで最初に戸惑うのが、賞味期限の年号です。タイでは**仏暦(BE)**を使います。
タイ仏暦 = 西暦 + 543
例えば「2569」と書いてあっても、それは2026年のことです。「古い食品だ!」と慌てる必要はありません。
日付の読み方
| タイ語 | 意味 |
|---|---|
| ผลิต (phalit) | 製造日 |
| ควรบริโภคก่อน (khuan boriphok kon) | 消費期限(Best Before) |
日付のフォーマットは日/月/年の順です。日本の「年/月/日」とは逆なので注意が必要です。
例: 「ควรบริโภคก่อน 01/04/2569」= 2026年4月1日まで
3. 屋台・市場 — 法律的にはどう規制されている?
屋台はFDAのライセンス対象外
タイの屋台や露天商は「工場」に該当しないため、Food Actの製造ライセンス義務は直接適用されません。ただし、Food Act第25条の食品の品質・安全基準はすべての食品に適用されます。
屋台の衛生管理は、地方自治体(バンコク都庁や各県庁)が担当しています。
「Clean Food Good Taste」ステッカー
保健省(MOPH)は1999年から「Clean Food Good Taste」(อาหารสะอาด รสชาติอร่อย)という衛生認証プログラムを実施しています。認証を受けた屋台やレストランには専用のステッカーが貼られています。
近年は「SAN Plus」として進化し、洗浄・調理・冷却・汚染防止の4原則を強化した基準が適用されています。
認証のない屋台でも美味しい食事はもちろんできますが、衛生リスクについては自己判断になります。特にお子さんに食べさせる場合は、認証店を選ぶのも一つの考え方です。
4. 不良品を買ったら — 消費者保護と製造物責任
消費者保護法
**Consumer Protection Act B.E. 2522(1979年)は、消費者の基本的な権利を定めています。管轄はOCPB(消費者保護委員会)**です。
| 消費者の権利 | 内容 |
|---|---|
| 安全な商品を受け取る権利 | 欠陥のない製品を受け取る権利 |
| 正確な情報を得る権利 | 虚偽・誇大広告の禁止 |
| 公正な契約条件の権利 | 不当な契約条項の禁止 |
製造物責任法 — 過失の証明は不要
Product Liability Act B.E. 2551(2008年)は、タイの製造物責任法です。この法律の重要なポイントは、**厳格責任(strict liability)**が採用されていることです。
消費者は製造者の「過失」を証明する必要がありません。証明すべきは以下の2点だけです。
- 製品を通常の方法で使用・保管していたこと
- 損害が発生したこと
責任を負うのは製造者・輸入者・販売者です。この法律は外国人にも同じように適用されます。「外国人だから泣き寝入り」ということはありません。
苦情の申立て先
| 窓口 | 連絡先 | 対象 |
|---|---|---|
| OCPB | 1166(消費者ホットライン) | 消費者保護全般 |
| FDA | FDA公式サイト | 食品・薬品の安全性 |
レシートは必ず保管してください。 返品・苦情の際に重要な証拠になります。
レモン法(欠陥商品責任法案)
OCPBは欠陥品の即時修理・交換・返金の消費者権利を定める法案(いわゆる「レモン法」)を推進しています。2024年に公聴会が行われましたが、2026年4月時点ではまだ成立していません。成立すれば消費者保護が大幅に強化される見通しです。
5. 日本から薬・サプリ・食品を持ち込むとき
処方薬
| 項目 | ルール |
|---|---|
| 一般処方薬 | 30日分まで(薬事法 B.E. 2510第13条(4)) |
| 持参すべき書類 | 処方箋の英語翻訳 |
| 容器 | 元の容器のまま持ち込む |
| 麻薬・向精神薬 | 90日分まで可能だが、渡航15日前までにFDAの許可証(Form IC-2)の取得が必要 |
サプリメント
個人使用の少量であれば問題ありません。ただし、大量に持ち込むと「輸入」とみなされ、FDAの規制対象になる可能性があります。
日本の食品(お菓子・レトルト等)
個人使用の少量は基本的に問題ありません。ただし、**肉製品(ソーセージ・ベーコン・ビーフジャーキー等)は畜産開発局(DLD)の許可なく持ち込むことができません。**個人使用の少量であっても免除規定はないため、注意が必要です。生鮮品も検疫の対象です。
6. まとめ — 3つのポイント
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| ① FDAマーク(อย.)を確認する | 加工食品を買うときは「อย. マーク+13桁の番号」をチェック |
| ② 賞味期限はタイ仏暦で読む | タイ仏暦 = 西暦+543。「2569」は2026年。日付は日/月/年の順 |
| ③ 不良品は製造物責任法で保護される | 過失の証明不要。レシートを保管して、OCPBに相談できる |
タイの食品安全制度は、FDAマークの義務化や製造物責任法の厳格責任など、法律上は整備されています。毎日の買い物でFDAマークを確認する習慣をつけるだけで、安心感が大きく変わります。
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この記事は2026年4月時点の一般的な情報をまとめたものです。食品安全や消費者保護に関する個別のケースについては、FDA(食品医薬品局)またはOCPB(消費者保護委員会、ホットライン1166)にお問い合わせください。本記事はタイの法制度に関する一般的な情報提供を目的としており、タイ法に基づく法的助言を構成するものではありません。具体的な案件については、タイの弁護士資格を有する専門家にご相談ください。当事務所では提携先JTJBのタイ人弁護士と連携して対応いたします。