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legal 2026.03.31 約12分

タイのECプラットフォームで製品安全規制が急加速|TISI認証・高リスク製品リスト・削除義務、日系出品者が知るべきこと

ETDA Section 18(2)通知(2025年12月31日施行)・TISI/FDA高リスク製品リスト・4機関合同執行を軸に、タイのオンラインマーケットプレイスにおける製品安全規制の強化を解説。TISI認証の要否、プラットフォーム側の義務変更が日系出品者に与える影響、今すぐやるべきチェックリストをまとめます。

タイのオンラインマーケットプレイスで、製品安全をめぐる規制が急速に強化されています。2025年12月31日、ETDA(電子取引開発機構)の通知(Section 18(2)通知)が施行され、指定プラットフォーム事業者に対して出品者の身元確認・製品情報の表示・違法製品の削除体制整備などの義務が課されました。2026年3月には、消費者評議会(Thailand Consumers Council)・TISI・ETDA・OCPBの4機関が合同で規制執行を強化すると発表しています。「プラットフォーム上の危険製品を一掃する」という政府の強いメッセージは、Shopee・Lazada等で販売する日系出品者にも直接影響します。

規制の法的枠組み — Section 18(2)通知とは何か

今回の規制強化の法的根拠は、Royal Decree on Digital Platform Service Businesses B.E. 2565(2022年) です。同勅令はETDAが所管し、タイ国内でデジタルプラットフォームサービスを提供する事業者に対する届出・規制の枠組みを定めています。

そのSection 18(2)は、電子取引委員会がプラットフォーム事業者に追加措置を課す権限の根拠です。この権限に基づき、2025年7月9日に「ETDA Section 18(2)通知」(Notification of the Electronic Transactions Committee Re: Other Actions for Digital Platform Service Operators in the Category of Marketplace for Goods with Specific Characteristics under Section 18(2) B.E. 2568)が官報掲載され、同年**12月31日(掲載から180日後)**に施行されました。

通知の適用対象は、ETDAが指定した商品マーケットプレイス事業者です。2025年7月9日の通知発行時には19プラットフォームが指定されており、その後追加指定を経て現在は21社とされています(Shopee、Lazada、Grab、Line Shopping、Alibaba等を含む)。具体的な最新リストはETDA公式サイトで確認できます。

プラットフォーム事業者の義務 — 5つの柱

Section 18(2)通知は、指定プラットフォーム事業者に以下の義務を課しています。

① 出品者の身元確認(seller verification)

TISI・FDA規制対象製品を販売する出品者について、氏名・住所・電話番号・メールアドレス・銀行口座等の情報を事前に収集・確認する義務です。出品者は法令遵守の自己証明(self-certification)を提出する必要があります。この仕組みはOCPBが推進するe-KYM(Know Your Merchant)政策とも連動しています。

② 製品情報の表示義務

製品名・画像・主要説明のほか、TISI認証マーク・登録番号またはFDA承認番号をリスティングに明示することが義務付けられます。4機関合同発表では、出品者が最初の商品画像にTISI認証マーク・ライセンス番号を表示することが求められており、不遵守の場合は罰金・懲役の可能性があるとされています。

③ 通知・削除メカニズム(Notice and Takedown)

ユーザーや規制当局が違法・危険製品を通報できる仕組みの整備が必要です。通報を受けたプラットフォームは出品者に通知し、調査完了まで製品表示を一時停止します。4機関合同発表によれば、TISI・OCPB・ETDAが違法製品を検出した場合にプラットフォームが迅速に対応する義務が強調されています(具体的な時間的要件については公式通知での確認を推奨します)。

④ 規制当局との連携・年次報告

TISI・FDAの要請に応じて出品者情報を提供する義務があるほか、規制対象製品の出品数・出品者数・削除数・苦情数をETDAに毎年報告することが求められます。

⑤ TISI APIへの接続(2026年実施予定)

4機関合同発表では、プラットフォームがTISIデータベースとAPI接続し、製品認証ステータスを出品前に自動確認する仕組みの整備が求められています。実施期限として2026年8月が報じられていますが、この日程についてはETDA・TISI公式では現時点で確認できておらず、今後の公式発表を注視する必要があります。期限内にAPI接続できないプラットフォームは、出品者身元確認・追跡メカニズムを代替実施することが求められ、出品者が特定できない場合はプラットフォームが消費者への賠償責任を共有するとされています。

TISI/FDA高リスク製品リスト — 何が対象か

2025年12月30日、ETDAはTISI・FDAと共同で「高リスク製品リスト」を公表しました。プラットフォームはこのリストに基づいて優先的にスクリーニングを行う義務を負います。

TISI管轄の対象製品(確認済み)には、ヘアドライヤー、電源タップ、モバイルバッテリー(power banks)、アダプター、換気扇(HVAC fans)、電気コード、バイク用ヘルメット、炊飯器、洗濯機・乾燥機、エアコン、電気調理器・エアフライヤー、電気温水器、電子レンジ、LEDランプ・LEDルミネア、漏電遮断器(RCD)、アイロン、空気清浄機、強化ガラス、食品包装フィルム、クレヨン、おもちゃ(複数種)、自動車・バイクタイヤ、シートベルト、ライター、ノンスティック調理器具、メラミン食器、哺乳瓶用乳首等が含まれます。EV関連製品の規格も準備中とされています。

FDA管轄の対象製品には、一般家庭薬を除く処方薬、管理対象のハーブ製品、麻薬・向精神薬、医療機器(医療施設使用・処方箋要のもの)等が含まれます。

完全なリストはETDA(https://www.etda.or.th/)およびTISI公式サイトで確認できます。

日系出品者への影響 — TISI認証は必要か

製品カテゴリに応じて、日系出品者に求められる対応は異なります。

タイ国内で電気製品を製造・EC販売している日系メーカーは、TISI強制規格(compulsory standards)に該当する製品については、タイ工業製品標準法(Industrial Product Standards Act)に基づきTISI認証が法的に義務付けられています。上記の高リスク製品リストの多くはTISI強制規格の対象です。認証マークとライセンス番号を商品画像に明示することが必要です。

日本からタイに電気製品を輸入してEC販売している企業も同様に、輸入品についてTISI認証が必要です。未取得・未表示の場合、リスティング停止・削除のリスクに加え、工業製品標準法に基づく罰則(罰金・懲役)も想定されます。

食品・化粧品・医薬品を取り扱う企業は、FDA管轄となります。オンライン販売においてもFDA承認・登録番号の確認と表示が求められます。

プラットフォーム事業者として運営・出店する企業には、上記の全義務が直接適用されます。出品者身元確認体制の構築、TISI/FDAリストに基づくスクリーニング、削除・報告体制の整備、そして今後のAPI接続への対応が急務です。

OCPB登録と消費者保護の強化

ダイレクトマーケティング事業を行うプラットフォーム事業者は、Direct Sales and Direct Marketing Act B.E. 2545(2002年)に基づくOCPB(消費者保護局)への登録と保証金の提供が必要な場合があります。4機関合同発表では、不適格製品の販売を黙認した場合に事業登録取消しの可能性も言及されています。

レモン法 — タイに「不良品の即時返品権」が来る

OCPBは現在、「レモン法(Lemon Law Bill)」と呼ばれる法案の立法化を推進しています。正式には「欠陥製品に対する責任法(Liability for Defective Products Act)」案で、欠陥・危険製品に対する即時修理・交換・返金の消費者権利を定めるものです。2024年のパブリックヒアリングを経てOCPBによるレビューが続いており、2026年3月現在まだ内閣提出・国会審議には至っていません。制定時期は未確定ですが、EC事業者は早期に返品・交換ポリシーを整備しておくことが考えられます。

今やるべきこと — 日系出品者チェックリスト

自社製品がTISI強制規格の対象か確認する — TISIの強制規格リスト(Compulsory Standards List)で確認

TISI認証が必要な場合は取得手続きを開始する — 認証取得には一定の時間がかかるため、早期着手が重要

商品リスティングにTISI認証マーク・ライセンス番号を表示する — 最初の商品画像への表示が求められる

FDA管轄製品の場合はFDA承認・登録番号を確認・表示する

出店先プラットフォームの規約変更・通知を注視する — TISI APIへの接続に伴い出品ルールが変更される可能性がある

返品・交換ポリシーを整備する — レモン法の立法化に備えて

OCPB登録要件を確認する — ダイレクトマーケティング事業該当性の検討

タイのECプラットフォーム規制については、TCCTの手数料・物流規制およびデジタル法シリーズ第4回(ETDA Royal Decreeの法的枠組み)もあわせてご参照ください。越境ECとしてタイに製品を輸出する場合は、2026年1月からの関税de minimis廃止との関係でも整理が必要です。

タイでのEC事業における製品安全規制への対応、TISI認証の取得手続き、プラットフォーム規制コンプライアンスなど、日本法・タイ法の両面からアドバイスいたします。お気軽にお問い合わせください。

本記事は2026年3月時点の公開情報に基づく一般的な情報提供を目的としており、タイ法に基づく法的助言を構成するものではありません。具体的な案件については、タイの弁護士資格を有する専門家にご相談ください。当事務所では提携先JTJBのタイ人弁護士と連携して対応いたします。

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