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column 2026.04.05 約8分

【タイ生活と法律】タイでも確定申告が必要?|駐在員・リタイア組が知るべき所得税と海外送金のルール

タイで暮らす日本人が「自分は確定申告が必要か」「日本の所得や年金はタイで課税されるか」「2024年からのルール変更はどう影響するか」を理解し、適切に対応できるよう解説します。180日ルール、海外所得課税の変更点、日タイ租税条約まで2026年最新版でまとめました。

【タイ生活と法律】シリーズ第4回です。前回は不動産・賃貸のルールをお届けしました。今回は、タイで暮らす日本人が一度は直面する「税金」の話です。「タイでも確定申告が必要なの?」「日本の年金をタイに送金したら課税される?」――2024年からルールが大きく変わりましたので、まとめてお伝えします。


1. あなたは「タイの税務居住者」ですか?

まず、自分がタイで課税対象になるかを判断する大前提から確認します。

ルールはシンプルです:1年間(1月1日〜12月31日)にタイに合計180日以上滞在した人 = タイの税務居住者です。

連続して180日いる必要はありません。出入りを繰り返しても、累計で180日を超えればカウントされます。ビザの種類は関係ありません。

課税対象
タイの税務居住者(年間180日以上滞在)タイ国内所得 + 海外所得(タイに送金した分)
非居住者(年間180日未満滞在)タイ国内所得のみ

駐在員のほぼ全員が該当します。 赴任して1年フルにいる方、家族帯同で長期滞在している方、リタイアメントビザで生活している方、留学生として通年在籍している方——いずれも税務居住者として扱われます。


2. 2024年からルールが変わった ― 海外所得の送金課税

ここが本記事の最重要トピックです。

何が変わったか

歳入局(Revenue Department)は2023年9月15日、Revenue Code第41条の解釈を変更する通達(Por.161/2566、Por.162/2566)を発出しました。2024年1月1日から適用されています。

〜2023年まで2024年1月1日〜
海外所得への課税タイミング稼いだ年と同じ年にタイに送金した場合のみ課税稼いだ年・送金の年に関わらず、タイに送金すれば課税
翌年以降に送金した場合非課税(節税策として広く使われていた)課税対象

つまり、「去年稼いだお金だから今年送金してもセーフ」という節税策が使えなくなりました。

重要な例外・経過措置

ただし、以下のケースは引き続き課税されません

  • 2024年1月1日より前に稼いだ所得は、いつタイに送金しても非課税(経過措置)
  • 送金しなければ課税されない(海外口座に置いておく分はセーフ)
  • その年にタイの税務居住者でなかった年に稼いだ所得は後から送金しても非課税
  • LTRビザ(長期居住ビザ)保持者は、一部カテゴリーで海外所得の送金が免税

「2年間送金免税」の提案 — まだ確定していません

歳入局は「2024年以降に稼いだ海外所得について、稼いだ年またはその翌年にタイに送金すれば免税にする」という立法を提案しています。2026年の確定申告期間から適用とされていましたが、2026年4月時点では未制定です(内閣承認・国務院審査を経て王立官報への公布が必要)。

現行ルール(送金時課税)を前提に計画するのが安全です。

「2024年以前の貯金」と「2024年以降の所得」を分けて管理する

実務上、重要なのは「いつ稼いだお金か」の証明です。2024年より前の所得であれば送金しても非課税ですが、「それを証明できる書類(銀行通帳、給与明細、配当証書等)」を保管しておくことが必要になります。


3. タイの所得税率 ― 意外と控除が手厚い

累進税率(2026年)

タイの個人所得税は累進課税で、最低0%〜最高35%の7段階です。

課税所得(バーツ)税率
0〜150,0000%(免税)
150,001〜300,0005%
300,001〜500,00010%
500,001〜750,00015%
750,001〜1,000,00020%
1,000,001〜2,000,00025%
2,000,001〜5,000,00030%
5,000,001以上35%

15万バーツ(約60万円)まで税金ゼロ。これは日本の基礎控除とは異なり、「課税所得の最初の帯がゼロ税率」という仕組みです。

主な控除・免除(外国人も使える)

課税所得は「収入からさまざまな控除を引いた後」に計算されます。控除を活用すると、実際に払う税額はかなり抑えられます。

控除項目金額
個人控除60,000バーツ
配偶者控除(所得なし配偶者)60,000バーツ
子ども控除30,000バーツ/人
給与所得の経費控除所得の50%(上限100,000バーツ)
生命保険料(タイ登録会社のみ)最大100,000バーツ
健康保険料(タイ登録会社のみ)最大25,000バーツ
プロビデントファンド(退職積立)給与の15%(上限500,000バーツ)
社会保険料(SSC)全額控除

注意: 日本の生命保険・退職口座はタイの控除対象外です。タイ登録の保険に加入した方が税制上は有利になります。

計算例:月給10万バーツ(約40万円)の駐在員

あくまでも簡易計算例(社会保険・その他細かな控除は省略)です。

項目金額
年収1,200,000バーツ
△ 給与所得控除(50%・上限10万)△100,000バーツ
△ 個人控除△60,000バーツ
△ 配偶者控除△60,000バーツ
課税所得980,000バーツ

税額の計算:

  • 0〜15万バーツ:0円
  • 15万〜30万(15万)×5%:7,500バーツ
  • 30万〜50万(20万)×10%:20,000バーツ
  • 50万〜75万(25万)×15%:37,500バーツ
  • 75万〜98万(23万)×20%:46,000バーツ

合計税額:約111,000バーツ(実効税率約9%)

月給40万円程度でも控除を活用すれば実効税率は1桁台に抑えられます。日本の所得税(課税所得同水準だと10〜20%程度)と比べて決して高くないことがわかります。


4. 確定申告の実務 ― やり方がわからない?

申告書の種類

種類対象
PND 91給与所得のみの場合
PND 90給与以外の所得(海外送金・投資・賃貸収入等)もある場合

海外所得をタイに送金している場合は、PND 90で申告する必要があります。

申告期限

  • 紙の申告書(窓口):翌年3月末日
  • e-filing(オンライン):2026年は4月8日まで延長(年度により変動)

オンライン申告ポータル(e-filing)は歳入局のサイトから利用できますが、申告書はタイ語のみです。英語版はありません。TIN(納税者番号)の事前取得が必要で、初回申告の場合は税務署での手続きが必要です。

「会社がやってくれている」方へ

タイで働く駐在員の場合、給与所得については雇用主(タイ法人)が毎月源泉徴収し、PND 91で会社が申告・精算しているケースが多いです。この場合、ご本人が申告書を書く必要はありません。

ただし、日本本社から支給される手当・日本での所得がある場合は個別に確認が必要です。これらがタイで課税対象になる可能性があり、会社の経理担当や顧問税理士に確認することをお勧めします。

申告しなかった場合の罰則

  • 申告義務があるのに申告しない → 最大2,000バーツの罰金
  • 追徴税(本税)
  • 延滞利息:月1.5%(年換算18%)

5. 二重課税は防げる ― 日タイ租税条約

「日本でも税金を払い、タイでも取られる?」という不安は理解できますが、日本とタイの間には租税条約(二重課税防止条約)が締結されています。

この条約により、同じ所得に日本とタイの両方で税金がかかる場合、**一方で払った税金を他方で控除(外国税額控除)**することができます。

対象所得条約の対応
給与所得原則として勤務地国で課税
年金一定の条件のもとで免除または軽減
配当・利子・ロイヤルティ源泉税率の上限を規定

ただし、条約の適用は自動ではありません。 確定申告時に「外国税額控除」として自分で申告する必要があります。この点を見落とすと、同じ所得に二重で課税される状態が続いてしまいます。


6. まとめ ― 3つのポイント

ポイント内容
① 180日以上タイにいるなら海外所得もタイで課税される可能性がある
② 2024年以前の貯金は送金してもセーフ2024年以降に稼いだ分をタイに送金する場合は要注意
③ 日タイ租税条約で二重課税は防げるただし申告時に自分で主張する必要あり

リタイアメントビザで暮らしている方、海外の年金・投資収入をタイに送金している方は、特に2024年以降のルール変更の影響を確認する必要があります。「自分は大丈夫か」が不安な方は、タイの税理士(公認会計士)に早めに相談することをお勧めします。


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この記事は2026年4月時点の一般的な情報をまとめたものです。税務は個々の状況によって大きく異なります。具体的な申告・節税については、必ずタイの税理士(公認会計士)または税務専門家にご相談ください。当事務所は税務申告の代行は行っておりません。本記事はタイの法制度に関する一般的な情報提供を目的としており、タイ法に基づく法的助言を構成するものではありません。

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