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company 2025.10.01 約10分

タイ進出の第一歩|駐在員事務所・支店・現地法人…どの形態が自社に合うか【連載第1回】

タイへの主な進出形態(駐在員事務所・支店・現地法人・合弁・BOI)を比較表と判断フレームワークで整理。タイ進出の全体像を紹介する連載第1回。

この記事のポイント

  • タイへの進出形態は「駐在員事務所・支店・現地法人・合弁・BOI奨励企業」の5つが主な選択肢
  • 形態ごとに「できること・できないこと」が大きく異なり、目的に合わない形態を選ぶと後の移行コストが膨らむ
  • 外国人事業法(FBA)とBOI制度の理解が、タイ進出の法務設計における基本的な出発点

はじめに:なぜ今タイなのか

タイはASEAN屈指の製造業集積地として、長年にわたり日本企業の主要進出先であり続けています。自動車・電子部品を中心に多くの日系企業がすでに進出しており、バンコク都市圏には日本語対応のビジネスインフラも整っています。日本とのEPA(経済連携協定)の活用や、BOI(タイ投資委員会)による外資優遇制度の存在も、タイを選ぶ理由の一つとして挙げられます。

ただし、「タイに進出する」と一口に言っても、進出「形態」の選択が、その後のビジネス展開を大きく左右します。本連載では、タイ進出を検討する日本の中小企業の方向けに、各進出形態の法的な仕組みと実務ポイントを、日本の弁護士の視点からご紹介します。


主な進出形態の全体像

タイへの進出に際して考えられる主な形態は以下の5つです。

1. 駐在員事務所(Representative Office)

日本の本社の出先窓口として設置する拠点です。収益を伴う営業活動は原則として行えません。市場調査・情報収集・品質管理・本社との連絡調整といった支援業務に限定されます。設立手続が比較的シンプルで、タイ事業の準備段階の拠点として利用されることがあります。

2. 支店(Branch Office)

日本本社の一部として設置する拠点です。駐在員事務所と異なり一定の収益活動が可能な場面もありますが、外国人事業法(FBA)上の規制業種に当たる場合は外国人事業許可(FBL)の取得が求められます。本社が法的責任を直接負うという点が現地法人との大きな違いです。

3. 現地法人(Thai Limited Company)

タイ法に基づいて設立する独立した法人(子会社)です。タイで本格的に事業展開する際に最も一般的に選ばれる形態で、法的責任が法人に限定される点が支店と異なります。ただし外国人事業法の規制により、業種によっては外国資本が50%を超える場合に外国人事業許可が必要になります。

4. 合弁会社(Joint Venture)

タイ資本のパートナー企業と共同で設立する会社です。外国人事業法の規制業種においてタイ側が過半数を保有することで事業が可能になるケースや、タイ市場のローカルネットワーク・許認可を活用する目的で選択されることがあります。

5. BOI奨励企業

タイ投資委員会(BOI)の奨励を受けた企業は、対象分野において外国資本100%での事業運営が認められるほか、法人税の免除・減免などの優遇措置を受けられます。製造業・先端技術・物流・医療・デジタル産業など、奨励対象業種は幅広く設定されています。


進出形態の比較表

比較項目駐在員事務所支店現地法人合弁会社BOI奨励企業
収益活動不可限定的に可
法的独立性なし(本社の一部)なし(本社の一部)ありありあり
外資100%出資業種による業種による規制業種では困難奨励分野で可
設立の容易さ△〜✕
設立所要期間目安2〜3ヶ月3〜4ヶ月2〜3ヶ月2〜4ヶ月4〜9ヶ月以上
課税(概要)原則なし本社送金時に課税法人税20%法人税20%免除・減免あり
撤退の容易さ△〜✕

※あくまで概要であり、個別の状況により異なります。


どの形態を選ぶか:判断のポイント

進出目的から考える

目的検討に値する形態
市場調査・情報収集が主目的駐在員事務所
本格的な販売・製造事業現地法人またはBOI
規制業種でタイ資本が必要合弁会社
製造業・先端技術で優遇を活用BOI奨励企業
特定プロジェクト型の一時的事業支店(限定的なケース)

外国人事業法(FBA)の確認

タイでは「外国人事業法(Foreign Business Act B.E. 2542)」により、外国資本が50%を超える企業は一定の業種への参入が制限されています。自社の事業が規制リスト(附表1〜3)に該当するかどうかの確認が、形態選択の前提として重要です。この点は第3回で詳しく取り上げます。

BOI奨励の可能性を探る

製造業・農業・物流・医療・デジタル産業等はBOI奨励の対象業種が比較的多く、奨励を受ければ外国資本100%での事業が可能になります。「BOIは大企業向け」というイメージをお持ちの方もいますが、中小企業でも取得できる業種・規模の案件は多く存在します。


日本企業が陥りがちな初期の誤解

「まず駐在員事務所で様子を見よう」が裏目に出るケース

設立が容易な駐在員事務所から始める発想は理解できますが、駐在員事務所は収益活動が禁止されているため、実質的に営業活動を行ってしまうと法的・税務的なリスクが生じる可能性があります。また後から現地法人へ移行する際には別途設立手続が必要になるため、最初から現地法人として設立した方がトータルコストの面で合理的なケースも少なくありません。

名義株主(Nominee)への安易な依存

外国人事業法の規制を回避するために、実態のないタイ人株主(名義株主)を使う手法が一部で行われてきました。しかしこれはタイ当局から違法と判断されるリスクがあり、近年の取締強化の流れもあります。合法的な手段(BOI・合弁・FBL取得)を選択することが重要です。


まとめ

タイへの進出形態の選択は、事業目的・投資規模・対象業種のFBA規制・BOI奨励の適否によって最適解が異なります。形態選択を誤ると、後から移行コストが発生したり、法的リスクを抱えたりすることにもなりかねません。

次回予告:第2回「タイの駐在員事務所・支店とは?|できること・できないこと・設立手続を詳しく紹介します」


タイ進出の形態選択についてご不明な点があれば、お気軽にお問い合わせください。タイ法に関する具体的な対応は、提携先JTJB International Lawyersのタイ人弁護士と連携して対応いたします。

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本記事はタイの法制度に関する一般的な情報提供を目的としており、タイ法に基づく法的助言を構成するものではありません。具体的な案件については、タイの弁護士資格を有する専門家にご相談ください。当事務所では提携先JTJBのタイ人弁護士と連携して対応いたします。

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